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2.8 節 レアリズムによる現代科学の復興

2.8.1 量子力学を創設したユダヤ系物理学者達が何故にナチスに迫害されたか

 量子力学は、既知の理論を外挿することによって得られたものではありません。 量子力学の構築は現実に基づいて構築されました。 量子力学を創設するに際に位置と運動量の両方を同時に正確に測定することは不可能であるという不確定性原理が論議されました。 そして、電子の物理状態は波動関数により表現するとSchrödingerの波動方程式によって、観測しようとする操作を演算子として物理量を求めることができました。 観測される境界条件を含む定常状態では量子化されている物理量が得られます。
 こうした量子力学の計算では飛び飛びの定常状態の遷移のプロセスに関して説明はありません。 このような量子物理学を創造したN.Bohr (1885-1962), E. Schrödinger (1887-1961), W. Heitler (1904-1981) 等はユダヤ系の物理学者でリアリストであったので量子力学を確立できたと考えられます。 当時の物理の世界にいた量子力学の創設者達はナチスの覇権主義に嫉妬心という悪魔が取りつかれる側面を持っていることを感知してその台頭を好ましく思いませんでした。 そこで、ナチスの覇権主義者達は個人主義的なユダヤ人を攻撃の標的にしました。こうして、ユダヤ人物理学者達はやむなく経験論の英国や米国に逃れました。 
  

2.8.2 情報処理技術におけるアナログ技術からデジタル技術への革命

  古典力学は経験論のイギリスでニュートンによって観測値を基礎に創設されました。 しかし、当初はヨーロッパ大陸の論証的知識を重んずる合理論は受け入れられませんでした。古典力学はその理論の実用性によって受け入れられました。 他方、量子力学は計算が容易ではないので、計算によるのではなく、解説によって理解したと考える人が多いです。解説書を読んでも異なる測定方法で現れ波動性と粒子性を同時に思い描くことはできません。
 20世紀の後半になって情報処理技術の分野においてデジタル化が進行して、 飛び飛びのデータを扱うデジタル技術が連続で線形変化を扱うアナログの技術を凌駕して アナログ技術者の数は少なくなりました。 人工知能などの開発で人間の認識も飛び飛びに状態を遷移すると理解されるようになりました。 ルネッサンスはイタリアで14世紀に始まった運動で、教会中心の文化を現実主義的なギリシャ文化に戻そうとした運動でした。 それは現実を見つめ直す世界観の転換でした。 20世紀後半の宇宙開発の時代になって、天文学や宇宙開発の研究の分野では因果律を教義とする古典力学的な科学が隆盛を極めました。 後進国では理論先行で学習して既存の知見を外挿した研究が行われています。やがて、21世紀になると科学論文の数が増えて、難解化したので理科離れが進みました。

2.8.3 アナログからデジタルへの革命による現代科学の復興
 -現代科学の復興には全体主義的に空想を礼賛する風潮を一掃すべきです-

  新しい科学の建設は先入観を持たずに実体を正面に見据えてボトムアップで研究しなければなりません 。 しかし、理論を好む学者達は実験事実の報告を軽視して、従来の難解な知見を並べなければ不勉強として新しい科学の芽を摘み取っています。 新しい実験の報告に多量の引用データが必要でしょうか。
  現在の学会の権力を握り、敵を作っては集団で攻撃をする教条主義の学者達の振る舞いは ドイツのナチズムや中国の紅衛兵を垣間見えるようです。 ルネッサンスはレアリズムによっていたという歴史を肝に銘じて新しい研究成果を評価すべきです。 科学界で勢力を増そうとする全体主義的な反レアリズムの風潮を阻止すべきです。(lat modified April 1, 2023)


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