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2.7 節 生物の進化

2.7.1 生体の組織による進化
-単細胞内で生まれて内部で成長する小胞群により分業を進展させるた進化-

 生物は需要に対応して供給するような結果となる連鎖反応によって生命活動をしている。 その活動を続けて環境が変化し、生物がその変化に適応するという進化をする。他方、生体自体も内部で進化する。 大きな細胞の中で同じ小胞が発生しても、同じ細胞の内部で共に成長すると、おかれた状況が相違することから相違した小胞となる。 つまり、小胞が大きな細胞内でそれぞれに活動しながら成長すれば、専門的な機能を持つ複数の小胞の集団の組織になる。 その細胞が環境に適応して活動すれば、種々の専門機能を持つ小胞の組織に進化する。高度な機能を持つ組織に進化した細胞が幾つも集まって、 生態系を形成し、その中で成長することで、その細胞も専門的な役割を担う細胞となる。 こうして、生物が世代交代して進化してきたしくみは現在の生物にも見受けられる。

  
  図2.7.1 熱運動している気泡の中の気泡(画像をクリックすると動画に移動します。)炭酸水に鉄の微粉末を混ぜると鉄粉を付着した気泡が浮上して、気泡の中に小さな気泡が発生します。

2.7.2 外部環境の変化を活動のループに組み込んだ生物の活動

 生物は需要に対応して供給するような結果となる連鎖反応によって生命活動を営んでいる。 植物は環境の変化に対応して活動を行っているが、動物は秒単位の状況の変化に対応して素早く活動を行っている。 生物の活動は経験により生存に有利な反応を記憶しておいて、同じような状況でそれを再演することが生存にとって有利になる。
  そのためには、記憶することと其の記憶を選び出すしくみが必要である。それは活動の経験をする際に自ら形成する 。連鎖反応は次々と反応火した領域が転送されるので、その反応に伴って周囲にルートが形成され、そのルートによって活動の再演がなされます。
  生物の行動の制御は外部環境の変化を活動のループ取り込んだ、オープンループ制御である 。 人間が思考する際に行われる情報を処理する活動はオープンループの制御系の一部です。発達した思考の活動もオープンループでなければならない。 思考して外部環境に働きかけて、その活動の結果を次の活動を開始する動機にしている。 ところが、制御する活動と制御される活動は同じではない。つまり、行動を制御する活動は実際の世界の活動とは別である。 思慮深くあるべきではあるが、神経回路網に記憶された情報処理の活動だけで終始しているだけで問題がある。 神経回路網に準備された情報処理の活動だけで終始しているのは閉ループの制御系である。そこで、思考だけで終始することがあるが、 閉ループ制御は現実から乖離するという危険性がある。

2.7.3 インパルスを転送する神経細胞の回路網が知能の形成する仕組み

 動物は需要に対応して供給となるような行動によって生命活動を営んでいる。 その活動の連絡を担うのが 神経回路である。その回路網の要素である神経細胞はインパルスを発生して転送している。 神経細胞は、閾値で発火して、直ちにピークに達してから消滅する。 その反応が神経細胞の細胞体から延びている突起状の構造である軸索(axon)に沿って伝達されて、 他の神経細胞にシナップスで他の神経細胞に受け渡しが行われている。 そこでは、インパルスという活動が伝わるルートに意味あって、インパルスの波形を分析しても意味がない。 情報の伝達は一連の反応に意味が含まれている。動物が発する鳴き声は、動物がおかれている状況において意味が理解できる。
 人間は言葉を使用して生活するようになり、大脳に言語野を持つに至っている。そこで人間の大脳は連合野が大きな領域を占めている。 現代人は言葉を持って生活しているところに特徴がある。言葉は物事を表象する音声や記号であるので、 最初に言葉を理解するには言葉が使われている状況で理解がなされる。言語を習得するには文章で覚えることにより、わからない単語は使われている文章から理解できるようになる。
 文明社会は言語によって支配されます。そして、現代人は思考する世界であるロゴスを持って生きていて、情報化が進んだ社会に生きています。そこでは共通して成り立つ事柄を表現した文章が尊重されて共有されています。確かに、ロゴスには普遍で変わらないのもが多くを占めている。  しかし、科学的知識というのは個性がないから皆で共有できます。ところが、現実の人間には個性があります。個性によって新しい文化が創造されます。(last modified May9. 2023)


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