惑星の大気が東西方向に周回していることを図2.4.1,1~図2.4.4 の写真に線で示します。金星のスーパーローテーションが金星の昼の面で暖められた大氣が夜の面に向かうという機構で起こるという説がありましたが、金星の公転が225日、自転が243日であり、100日以上の昼と夜の周期により一方向に100m/sで金星を周回する気流が発生することはありません。著者は惑星を東西方向に周回する気流は太陽が一方向の自転の角運動慮を持って衝突する太陽風が原因であるという説を提案しました。 [参考動画: https://youtu.be/3upO1KcvxF4 ]
図2.3.1 金星を周回する気流 *1) 図2.3.2 地球を周回する気流 *2)
*1) Reproduced from https://akatsuki.isas.jaxa.jp/gallery/data/files/uvi_20180330_120112_283_365_l2b_v20180601_mod.png
*2) Reproduced from https://earthball.1101.com/assets/2020/images/contents/img2.png
図2.3.3 木星を周回する気流 *3) 図2.3.4 土星を周回する気流 *4)
*3) Reproduced from Jupiter_and_its_shrunken_Great_Red_Spot.jpg (940×940)
(wikimedia.org)
Original data , S. S. Limaye, Icarus, (65), 335-352, (1986).
*4) Reproduced from, saturn.jpg (4613×2233) (astroarts.co.jp) ,
Original data, A. Sanchez-Lavega, et.al Icarus, (2004)
[金星および地球に到達する太陽風の量]
現在の太陽が放出すH+の総量が109 kg/secとして、 金星および地球に到達する量を公転軌道の球の表面積と惑星の断面積の比から概算した値を表2.4.1 に示します。金星と地球では惑星のデータはほぼ同ですが太陽からの距離が相違します。
表2.3.1 金星および地球に飛来する太陽風の量
半径(km) | 断面積(km)2 | 公転半径(km) | 公転面(km)2 | 球面面積比 | 質量kg/s | |
金星 | 6.052x103 | 1.150x108 | 1.082x18 | 1.47x1017 | 0.78x10-9 | 0.782 |
地球 | 6.378x103 | 1.277x1082 | 1.496x108 | 2.81x1017 | 0.45x10-9 | 0.454 |
太陽からの距離が相違することから、到達する毎秒当たり量が相違します。地球には1年間で1.43x107 kgの水素がおよそ500km/secで降り注いでいることになります。
金星は自転周期は243日で、磁気を持っていません。金星の大気は厚く、約90気圧もありその大気が太陽風の直撃を受けています。 金星の大気は金星の自転の速度よりはるかに速く4日で金星を時計計回転方向に一周する風が吹いています。
これは、金星の大気の周回は太陽風によって駆動されています。大氣を時計回転方向に周回させるメカニズムにより金星の初期の時代に太陽から放出された物質の衝突によって金星の自転が逆転する作用を及ぼしたと考えられます。 物性論に基づく比較惑星学"-4.1-唐澤信司著
[赤道付近の気流:貿易風]
金星では大気が時計回転方向に周回しています。これは、太陽風が太陽の自転による毎秒1.89kmの反時計回転方向の運動成分を持っています。 その太陽風が赤道付近に正面から衝突すると回転運動の成分が歯車のしくみによって大気を時計方向に駆動する効果があります。
赤道付近の貿易風は太陽から離れるに従って金星、地球、木星と弱くなり、土星では消失しています。 この現象には太陽の自転に伴って発生するベクトルポテンシャルが太陽に面した惑星の上空の荷電粒子を時計回転方向に駆動することが
関与しています。これらの現象は太陽から放出される回転の全角運動量が球の表面積が広がると密度が低くなり、 太陽から惑星までの距離の2乗で減少します。
[地球の中緯度の気流:偏西風]
図2.4.2に示すように地球では中緯度では偏西風が吹いています 。これは、地球の大気と擦り抜けるように通過する太陽風が西側では地球の自転で反時計方向に周回している気流を減速します
。他方、東側では加速します。加速作用が減速作用を陵駕しますので、地球の自転速度より早く周回されます。この効果により太陽を背にした側の荷電粒子の運動を反時計方向に加速します。この効果は自転周期が非常に遅い金星では微弱です。
[木星の気流が縞状になるメカニズム]
木星の表層のガス分子は太陽の放射線の照射と高速の自転運動による衝突によりイオン化しています。 平行に運動する荷電粒子間には水平方向の磁気的結合があります。一様な流れに速度差があるとその境界領域で並進運動の一部が回転運動に変換されて渦が発生します。木星では図2.4.5
に示すように気流の流れに渦ができています。極域では地表が回転円盤のようになるので、渦が交互に連なるように幾つも発生します。(last modified April 1, 2023)
図2.3.5 木星を周回する気流と渦
[Origin of this photograph: o0900056214758116546.jpg (900×562) (ameba.jp)
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