木星のオーロラを発生するイオンは太陽風の荷電粒子が衝突して生成されます。図2.4.1 に示すように木星では北極だけにオーロラが出現することがあります。地磁気の南北の磁極が相違する磁力線はありません。何故、南極にオーロラが現れないのでしょうか?これは北極に落下する荷電粒子があっても、南極に落下する荷電粒子がないことがあることを示しています。 図2.4.1 に示すオーロラには赤道面に存在するガリレオ衛星による輝点があります。2.2節で述べたように平行に運動する荷電粒子間には水平方向の磁気的結合があります。ところが、ガリレオ衛星により赤道面に放出された荷電粒子群は衝突を重ねることにより運動の方向が様々に変えられて、赤道領域から極域に向かう流れが発生して、それらの荷電粒子群によってオーロラが発生します。ところが南半球に大赤斑があり、ここで、赤道領域から極域に向かう荷電粒子群が抑制されると説明できます。
図2.4.1 木星を周回する気流と北極に発生するオーロラ
Origin of this CG: 0fa9a8f4-s.jpg (600×360) (yukawanet.com)
木星の内部構造は、図2.4.2に示すように、 中心に高密度の中心核があり、 そのまわりを液状の金属水素の層が覆い、その液体金属水素の層を液体状態の水素の層が囲んでいます。
木星の地磁気は図2.4.3 に示すように、主に木星内部の厚い液体金属状態の荷電粒子の運動によって発生していると考えられます。
木星は地球と同じ反時計方向に自転しています。ところが、地球の地磁気の極性は木犀と反対です。なぜ、反対になるのでしょうか。地球の地上の地磁気が地球の上空の荷電粒子群によるとすると地磁気の方向が反対になると説明できます。
図2.4.2 木星の内部構造 図2.4.3 木星の地磁気
図2.4.4 に 木星の自転による磁気圏の回転を介したイオプラズマトーラスの回転が高速の追い風となりイオの大気の電離とプラズマの流を発生する様子を示しています。 F.
Tsuchiya,等は惑星観測用宇宙望遠鏡「ひさき」を用いてイオのプラズマトーラスの硫化物イオンの極端紫外線の発光がイオの下流で強くなることを明らかにしました[1]。 [1] [Journal of Geophysical Research Space Physics: Local electron heating in the Io plasma torus associated with Io from HISAKI satellite observation https://doi.org/10.1002/2015JA021420 ]
[https://www.astroarts.co.jp/article/assets/2016/05/4302_illustration.jpg]
図2.4.4 イオのプラズマトーラス [1]
イオは木星を中心とした半径4.217x105 kmの公転軌道を1.77日で周回しています。
他方、木星の地磁気は木星の自転と同じ周期の0.4135日で回転しています。ここで、地磁気に取り込まれたH+がイオに衝突してイオンを放出する可能性を確認するためにその衝突の運動エネルギーを求めて表2.4.1に示します。 その結果、掃引するH+の運動エネルギーの大きさはイオンを発生することができるのに充分な値です。
表2.4.1 木星の磁気圏と共に運動するH+に衝突する現象の物理量
公転半径 | 公転周期 | 周回速度 | 速度差 | ||
イオの公転 | 4.217x105km | 1.77日 | 17.3 km/sec | ||
木星の地磁気 | イオの位置 | 0.4135日 | 74..1 km/sec | 56.8 km/sec | 16.8eV |
木星の内部の荷電粒子群と木星の外側の荷電粒子群が磁気的結合します。その磁気的結合は外の荷電粒子に累加されます。そこで、木星の自転の角速度が同じでも、磁気的結合による加速は木星を離れた荷電粒子の方が速くなります。その荷電粒子がガリレオ衛星の表面に衝突して、ガリレオ衛星の表面から荷電粒子が放出されて周回します。スパッタリングされた荷電粒子は木星の赤道面が最も多く、周回する速度も赤道付近が最も早いです。北極や南極では周回速度が遅くなり、磁気的結合による荷電粒子群は消失します。そこで、極域で重力でゆっくり落下する荷電粒子がオーロラを発生させます。こうして、木星では図2.4.51に示すようにドーナッツ形に高速の荷電粒子が周回しています。 (last modified April 25, 2023)
図2.4.5 木星のガリレオ衛星に付随したドーナッツの形をした荷電粒子群
目次へ -2.4-