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2.6 節 生物の誕生[1]

2.6.1 細胞膜を構成する鎖状炭化水素分子の合成


図2.6.1. 生物の細胞膜の主成分である炭化水素の合成

 太陽風の高速のH+が原始地球の上空の大気のCO2と衝突して、炭化水素分子を作ります。沸点温度が低い炭化水素は上空に留まり重合反応を続けます。 重合反応では、Cに結合したH+の反発により長鎖炭化水素が合成されます。現在の生物細胞膜は、炭化水素分子のC16H34またはC18H38を主成分にしています。 C16H34は、融点20℃、沸点300℃です。C18H38の 融点27.8℃、沸点316.15℃です。いずれも原始地球の地上の環境では液体です。 炭化水素は比重が軽く疎水性であり、水面で油膜となって浮遊します。水面に浮遊する炭化水素の尾部に酸素が結合してカルボキシル基(COOH)となったのが脂肪酸です。 この分子は水面の膜を通過しないために、親水性部分の外側にした細胞膜を形成しました。

 2.6.2 ラセン型格子構造の液体の水の分子の組織的な熱運動

 液体の水は水素結合によって水素原子が結合する酸素原子を入れ替えることが行われ、 水素原子の結合相手は非常に短い時間で入れ替わっています。 水面の水面に反射した光はキラキラと光りますが、偏光メガネで水面を見ると反射光が消えます。これには水のラセン構造が関与しています。 水(H2O)は水素結合で連結した1つの巨大な分子の構造であり、四面体単位の分子を構成要素とした格子構造で最もエネルギーの低い構造はα水晶型の構造です。 このラセン構造は平面構造を底にして頻繁に発生します。水面は平面的であり、水分子がらせんに配列した構造を作ります。 この構造には空隙孔があり、ラセン構造に浸入した長鎖の油膜分子が水面に垂直に配列して細胞膜を形成します。この水面に対して垂直に疎水性の長鎖炭化水素分子の配列にる細胞膜が長いタンパク質の分子やRNAなどの長い糸状の分子を生成することを可能にします。そして、様々な分子を付着した膜が絶え間なく波風にゆすられる水面に浮かび、日中には太陽から紫外線や光の照射を受けて化学進化しました。


図2.6.2.
水のラセン構造の空隙孔を囲むH2O分子の配列

 2.6.3 細胞膜におけるタンパク質と核酸の分子の同時に合成するメカニズム

 地球上の全ての生物は、キラリティーがL型のアミノ酸をペプチド結合したタンパク質で構成されています。この細胞膜はキラリティーがD型の糖(DNAの構成要素)も合わせて生成しています。 水面に浮遊する長鎖炭化水素の細胞膜においてタンパク質を作るときに侵入するキラリティーがL字型の個々のアミノ酸に隣接する領域にその単糖単位からなる長鎖高分子炭水化物の糸が付加されて、 キラリティーがD型のラセン状の糖分子の核酸も生成されるようになりました。アミノ酸が結合してタンパク質が合成されて内部に侵入される周りではメッセンジャーRNAのアミノ酸単位が反対方向に合成されています。


図2.6.3.
細胞膜におけるタンパク質と核酸の糸状分子の同時合成

 2.6.4 タンパク質の合成をm-RNAの指示によって進行させる方法

 タンパク質の合成の情報を遺伝するDNAはキラリティーが相違する2つのラセン構造で構成されています。 一方はD型の輸送RNA(t-RNA)となり、 他方はL型のメッセンジャ-RNA(m-RNA)となって、タンパク質を合成します。 ここで、アミノ酸がm-RNAと物理的に結合すると、アミノ酸配列がランダムなタイミングで組み込まれるので、正確な合成ができません。 m-RNA配列の各アミノ酸単位は遺伝暗号のコドンで、アミノ酸を背負ったt-RNAのアンチコドンと照合されて、 コドンとアンチコドンが一致した際にt-RNA のアミノ酸がm-RNA配列に連結されてタンパク質が合成されます。 キ-とロックの関係の遺伝暗号によってm-RNAのアミノ酸単位の配列とタンパク質分子のアミノ酸の進行は一点で歯車が噛み合った場合だけに複製を進めます。 そこではキラリティ-が相違する分子は進行方向が逆回転です。



図2. 6.4 遺伝子暗号が噛み合った時に1ステップ進行するアミノ酸単位の m-RNAの配列とタンパク質分子

 2.6.5 DNAの詳細な構造

m-RNAは寿命が短いため、D型m-RNAのヘリックス糖が脱水結合により安定な分子領域でDNAを形成します。この二重らせん構造が捩じれると、回転方向に応じてL型分子列がD型分子列に近づいたり離れたりします。 このようなメカニズムにより、種々の特性を持つたんぱく質が合成されました。それらのタンパク質の機能を発揮するにはそれに合わせたシステムの変革の必要です。 このようにして生物は生命活動を営むようになりました。(last modified May 8 , 2023)
      
          
               図6.5 DNAを構成する二重らせん構造の構造


[参考文献]
[1] S. Karasawa, "Origin of Life in the Water of the Earth, Geol Earth Mar Sci,., Vol.5(1):1-7, 2023,
 DOI: 10.31038/GEMS.2023511


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