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1.3 節 科学の誕生 - 科学は共通理解の懸け橋 -

 ヘラクレイトスは、人はそれぞれの独自の見識を持って生きているかのように見えるが、ロゴスという共通のものを持っている。国が法に依って強化するように、 その共通にするものによって、個人は自らを強化しなければならないとを説いています。そのヘラクレイトスは「自然について」という著書を書いて神殿に奉納したのですが、どのように現実の法則を写しとるのかが書き残されています。古代ギリシャの哲学者たちが求めていたものは皆で共有することができる「ロゴス」であり、その正体を論議しました。飛んでいる矢は止まっていると、現実と思考が相違することを指摘しています。他方、中国の思想界では孔子(B.C561年~479年)が如何に生きるかを中心課題として論じていました。その言葉には神は存在せずに、 人のありようが論語等の書物に書き残されています。言葉が文明を作り、分明が言葉をつくりました。日本語では話者の気持ちによって結論の表現が変わります。英語では、結論の表現は簡単明瞭です。 英語が現在では、インターネット上で共通言語のように使われています。

1.4 節 プラトンのアカデミー -数学の無知者入るべからず。-

 プラトンは永遠に変わらない真理は現実の世界にはなくイデアの世界にある。 つまり、この机も、あの机も具体的な物に共通する性質が言葉という表象で表現されます。そこで、プラトンはイデアの世界について論議し、真理は感覚の対象ではなく、「解する法則」であるとしました[4]。
 プラトンの弟子のアリストテレスはイデアというものは見た経験から作られた概念であり、 言葉を用いた思考の背後に現実があるとしました。
 古代ギリシャの哲学者等が論議したイデアは大脳の神経回路網に実在しています。その脳の機能は記憶した事柄を呼び出して使うことで、 コンピュータは計算しますが、その際にコンピュータは記憶して、それを呼び出すだけという機能を使っています。
コンピュータに大量のデータを学習させることで、 そのデータの中から特徴を抽出し、画像認識や音声認識などを可能するAIという技術が開発されています。 最近は読み込んだデータのパターンを分類し、法則性を発見することや、特微量を自動で設定して学習させることにより画像認識や自動翻訳などを駆使して行うことが盛んです。

 1.5 節 日常現実の科学の扉を開く鍵 -[1たす1は2ではない。]-

 情報化社会になって知り得た情報を既知の法則を外挿することを学問とすることが盛んなされています。 しかし、自動車のコンピュータによる運転を考えれば明らかになるように、 計算に用いる情報が現実から瞬時に採取され続けなければ無人運転は実現が不可能です。
 科学を振興する際に個性を尊重する教育が必要があります。しかるに、2000年頃から日本では科学技術による振興策が検討されて、大学では自己評価を行い、 卒業時の学力を厳しく管理すること行われるようにうになりました。また、学会では多量の論文を引用することを必要としたので、難解な理論を引用した論文だけが受けられるようになりました。 その結果、画一的な教育で個性を奪われた学力の高いとされる学生が増加はしましたが、日本から発信される独創的な研究報告が影を潜めてしまいました。
  科学には普遍性といって個性を認めずに全てに同じとする傾向があって、科学という名の下で人権を軽視しする危険性に留意しなければなりません。 他方、束縛から放たれて自由になれば混乱を招く危険があるので、良識ある個人の確立が必要です。 日常的な現実の世界は「1たす1は2ではない存在」あるいは「突然の心の変化」があるということで認識できます。 今後は、従来の科学において取り残された分野における進展に期待が持てます。
(Last modefied April 2,2023)


[参考文献]
[4] ブライアン・マギー”知の歴史 ”, BL出版, 1999.

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