タイタンの大気の温度の高度分布を
図2.5.1に示します。タイタンには液体メタンの雨が降り、メタンの川や湖の存在が確認されています。 タイタンの大気は表面の1.45気圧です。
タイタンは地球に較べて重力が弱く対流圏が40km上空まであります。タイタンの大気の98.4%を窒素(N2)が占めています。
N2の沸点はタイタンの表面温度より低いので気体の状態で存在します。タイタンの大気の1.4%を占めるメタン(CH4)
はタイタンの表層の温度により液体で保持されています。
図2.5.1 タイタンの大気の温度の高度分布
[ Reproduced from https://www.kahaku.go.jp/exhibitions/vm/resource/tenmon/space/saturn/images/saturn_04.gif ]
氷(H2O)の表面に宇宙塵が付着すると、100K以下の温度では離脱しません[*1] ([*1 古家健次,”重水素比から探る、星・惑星系形成領域における水の生成と輸送”,
天文月報, 2018年1月, pp.41-49])。 その氷にNH3やCH4の分子が接触すると、分子間結合により付着して塊に成長します。 塊が大きくなると表面の比率が少なくなり全体のエネルギーは低くなります。 微粒子の点接触結合によって星間物質が大きな天体になると天体の内部に重力エネルギーが放出されます。
そのエネルギーはビリアル理論によれば重力ポテンシャルの半分の値です。
そこで、星間物質が集積されるに従い内部の温度が上昇します。 現在までに星間物質の集積によりタイタンで放出した重力のエネルギーの総量は (1/2)
EG-potential= (1/2)(3/5)(GMTitan2)/RTitan=1.4045x1029 J です。
このエネルギーの値は、比熱 (Cp)を使用することによって、およその温度上昇に換算できます。
タイタンのCpが水の同じ値(CpTitan=Cpwater=4.2 J・g-1・K-1) と仮定すると、
これまで重力で放出されたエネルギーを温度上昇に換算すると、ΔTTitan=+334 Kと計算されます。 こうして、タイタンの内部の温度上昇によりからN2やCH4等の分子が表層に移動します。
図2.5.2に示すように、土星からタイタンまでの公転軌道半径が120万kmの距離です。
タイタンの公転軌道は円ではなく太陽に面した場所では110万kmです。
土星は自転により10.7時間で周回しており、土星に内部の荷電粒子も同じ周期で回転しています。
並走する荷電粒子の磁気的結合は光速で伝わるので同じ周期で荷電粒子が並走することを連鎖させると仮定すると、
土星から離れた軌道を公転する荷電粒子にも磁気的k結合が同じ周期で回転するように加速します。タイタンの公転軌道の位置における仮定の荷電粒子の周回速度は194km/sです。
タイタンの実際の公転周期は約16日で速度は5.4km/sです。
そこで、荷電粒子がタイタンの表面を掃引する速度は(194-5.4)=186 (km/s) です。
図2.5.2土星の磁気圏の中を通過するタイタンの公転軌道を図示します。
図2.5.2土星の磁気圏の中を通過するタイタンの公転
Reproduced from 26c9649364b5a5135cc5a1c394e92c78.jpg (1600×900) (goo.ne.jp)
186 (km/s)の速度の荷電粒子がタイタンの上空を掃引すると考えると荷電粒子がタイタンの大気をH+の場合には運動エネルギーが186 eVあります。
このH+の衝突によってタイタンの上空の分子や原子がイオン化します。
表2.5.2に土星の自転とタイタンの公転に関するデータを示します。
図2,5.3に示す探査機ホイヘンスにより測定されたタンの気流の高度分布を示します 。
高度80km付近を除けばタイタンの気流は西風の風速が高度とともに上昇しています。
この気流の駆動力はタイタンの表層を掃引する土星の磁気圏が図2.5.4に示すように駆動しているモデルを提案します。
図2,5.3 タイタンの気流の高度分布 図2,5.4タイタンの気流の運動と磁気圏の運動
[ Fig.2.5.3 is reproduced from the paper, W. M. Folkner, et al, “Winds
on Titan from ground-based tracking of the Huygens probe”, Journal of Geophysical
Research: Planets, Volume: 111, Issue: E7, 20 July 2006, https://doi.org/10.1029/2005JE002649]
高度80 km付近に存在する西風がほぼゼロになる領域の存在を説明できます。高度80 km以下に高度を下げると大気の密度が高くなり、 大気の周回の速度を下げて最後にはタイタンの地表の速度になります。
この現象は土星の自転による回転が荷電粒子の磁気的結合によりH+が高速でタイタンの大気に衝突しているのが原因と考えます。タイタンの上空でイオン化して移動する荷電粒子は磁気的な結合により加速されますが、
その磁気的な結合は土星に面した表側と裏側では反対方向です。タイタンの土星側より裏側の速度が速い速度で掃引されます。
そこで反時計方向の風が優勢になります。その速度差の最大値(δv max)は タイタンの直径の位置でδv max= 2π{(rTitan)/T=411 m/secです。
反対方向に移動する荷電粒子の層は磁気的に反発するので消滅することなく層を形成します。 こうして、高度80 km付近に存在する西風がほぼゼロになる領域の存在を説明できます。
高度80 km以下に高度を下げると大気の密度が高くなり、 大気の周回の速度を下げて最後にはタイタンの地表の速度になります。(last modified April 1, 2023)
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